目次へ  次へ  前へ  ルフィミアネットの本はこちら

他人に物理的ではない損害を与える罪

名誉毀損罪(刑法230条)
 不特定多数の者に知れるような状態で事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立します。成立しない例外にあたるのは「1 死者の名誉を毀損したものの、摘示した事実が虚偽であるとは言えない場合」「2 公共の利害に関する事実をもっぱら公共の利益をはかるために行った場合で、かつ真実であることの証明をした場合」あと書かれていない例外として「3 真実だと信じていた場合に、そう信じたことが確実な資料と根拠に照らして相当な理由がある場合」です。間違いやすいのは真実を指摘した場合で、既に死んだ人の場合には上記例外1にあたりますが、生きている人の場合には2で示した公共性のある場合か、3のように「真実だと思うのも仕方ない」場合でなければ犯罪は成立するのでして、真実であっても名誉毀損罪は成立します。
 3年以下の懲役、3年以下の禁錮、50万円以下の罰金。
 (2008.4.23改訂)
侮辱罪(刑法231条)
 不特定多数の者に知れるような状態で、事実を摘示することなく、人の社会的地位を軽蔑する自己の判断を発表することで成立します。
 拘留、科料。
秘密漏示罪(刑法134条)
 正当な理由がないのに人の秘密を漏らした時に成立する犯罪ですが、「医師・薬剤師・医薬品販売業者・助産婦・弁護士・公証人・宗教・祈祷・祭祀」(現役か引退後かを問わない)の職にある(あった)者がその仕事の際に知り得た秘密を漏らした時に限ります。これらの職とは無関係な人に秘密をもらしてばらされてもこの犯罪は成立しません。
 親告罪。
 6か月以下の懲役、10万円以下の罰金。
信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条)
 嘘である噂をそうと知りながら言い触らしたり、もしくは何らかの策略によって人の信用を落とした場合に成立します。また同じ方法で業務を妨害した場合にも成立します。この場合の業務は職業はもちろん継続的に行う事務・事業の類をさします。
 3年以下の懲役・50万円以下の罰金。
威力業務妨害罪(刑法234条)
 いわゆる実力を行使して業務を妨害した場合に成立します。この場合の業務は職業はもちろん継続的に行う事務・事業の類をさします。
 3年以下の懲役・50万円以下の罰金。
電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)
 コンピューターやデータを壊したり、虚偽のデータを加えたり、不正な命令を実行させたり、その他の方法でコンピューターを期待通りに動かないようにして業務を妨害した場合に成立します。この場合の業務は職業はもちろん継続的に行う事務・事業の類をさします。
 5年以下の懲役・100万円以下の罰金。
 未遂処罰あり。
背任罪(刑法247条)
 他人のために事務処理する者が、自己または誰かの利益をはかる目的もしくは事務処理を頼まれたその他人に損害を与える目的で、任務に反することを行い、その結果その他人に財産上の損害を与えた場合に成立します。他人のために物を預かることは「他人のための事務処理」にあたりますし、自分の利益をはかるために預かった物を処分するのは、自分の利益をはかる目的で任務に反することを行い、財産上の損失を与えている訳ですから横領罪はつねに背任罪を含んでいます。言い換えれば背任罪のうちの一部が横領罪になるという関係なので、横領罪が成立すれば背任罪は成立しません。
 5年以下の懲役、50万円以下の罰金。
 未遂処罰あり。
 親族相盗例あり。
住居侵入罪・不退去罪(刑法130条)
 正当な理由がないのに人の住居・人の看守する邸宅・建造物・船舶に侵入することで成立します。また退去するよう求められたにもかかわらず正当な理由がないままこれらの場所から退去しなかった場合にも成立します。
 3年以下の懲役、10万円以下の罰金。
 未遂処罰あり。
 ちなみに、NHKの集金人が来たからと言って「帰れ」という呪文を3回唱えると不退去罪が成立するという主張は誤りです。詳細は演習1 NHK受信料に関するエトセトラにて。

目次へ  次へ  前へ  ルフィミアネットの本はこちら