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急ブレーキじゃない止まり方をしたいよね?

結論

急ブレーキにしないためには,
・ブレーキ操作レバーを右に入れっぱなしにするのではなく,ある程度の空気を入れたら真ん中に戻す
・速度が下がってきたら適宜のタイミングで,「ブレーキ操作レバーを左に動かして,多少空気を抜いて真ん中に戻す」
・止まる直前でブレーキ操作レバーを左に動かして空気を抜く(実はプロの技だと思う)。
・止まったらまたブレーキ操作レバーを左に動かしてそれなりに空気を入れて,レバーを真ん中に戻す(実はこっちは基本中の基本)
という手順が必要になりますが,
どの程度動かすかが,速度,客の数(重さによってブレーキの効きが変わる),天気(線路の状況に影響する),線路の状態によって違うので,
これをうまくこなすのがプロの技なのですし,
「電車は動かすより止める方が難しい」
と言われるゆえんのものなのです。 ……それでも,理屈を知ることで,攻略の手がかりになればと思います。

自動車や自転車のブレーキと同じところ

電車のブレーキには実は何種類かあるのですが,函館市電の体験運転で使用する車両で,運転士がブレーキ操作レバーで操作するブレーキは,自動車のブレーキペダルで操作するブレーキや自転車のブレーキレバーで操作するブレーキと原理は変わりません。動いている円盤に物を押しつける(はさみこむ)と摩擦で止まるというものです。摩擦ですから物の材質によって止まり方は変わりますし,押しつける力が弱ければ速度の下がり方も弱いし,押しつける力が強ければ速度の下がり方も強くなります。このあたりは電車も変わりません。

自動車や自転車のブレーキと違うところ

押しつける力を制御するのは自動車であればブレーキペダルですし,自転車であればブレーキレバーです。そしてどちらも「ブレーキペダルを踏み込む量・ブレーキレバーを握る量」と「押しつける力」が比例しています。踏み込む量,握る量が小さければ押しつける力が小さい,踏み込む量,握る量が大きければ押しつける力も大きい,そういう関係にあります。ですから一定の割合で速度を落としたければ,適当な位置まで踏み込んで・握ってそのままその状態を維持すればいいわけです。
ところが,函館市電の体験運転で使用する車両で,運転士がブレーキ操作レバーで操作するブレーキは,ここの仕組みが全く違います。
自動車や自転車でブレーキのために押しつける物の強さを一定にするためには,目標の位置まで踏み込んで・握ってそのままにするだけです。ところが電車でそれをやろうとすると,「ブレーキ操作レバーを右に入れて,空気を目標の位置まで入れた後,レバーを元に戻す。」
もしくは
「ブレーキ操作レバーを左に入れて,空気を目標の位置まで抜いた後,レバーを元に戻す。」
という操作になります。
そのままにしておけばいい自動車・自転車と,「入れる・抜く」→「元に戻す」が必要な電車。この感覚の違いが,ブレーキの難しさの最大の違いなのです。

現在体験運転を常時開催している島根県の一畑電車の石飛さんが,自動車の運転に慣れてない人の方が上手だという趣旨の指摘をするのは,自動車のブレーキの感覚に引きずられてしまうことをさしていると思われます。

仮に右にいれっぱなしにするとどうなるでしょう?
これは自動車でいうと,ブレーキペダルをどんどんどんどん踏んでいくことに相当します。押しつける力がどんどんどんどん強くなっていくんですね。そうすると自動車だって急ブレーキになるのはわかると思います。それと同じです。ブレーキペダルが無限の長さでないから限界があるように,電車の方もあらかじめ準備していた空気の量がありますからその限界はあるのですが,急ブレーキになってしまう点は変わりません。
逆に左にいれっぱなしにするのは,ブレーキペダルから足を外していくことに相当しますから,これは最後ブレーキから足を離すことになります。ブレーキがかかってない状態になるのです。

ブレーキのレバーは基本的に操作の後必ず真ん中に戻すことを習慣にしています。おそらくは,右なり左なりに入れっぱなしにすることが,予期せぬ結果になる危険をはらむからではないかと想像しています。

ブレーキについては,体感の違いもあります。
自動車も自転車もブレーキをかけるとすぐに効き始めるという感覚があります。(現実には「ブレーキを踏む・握る」と思ってから,実際にそういう動作をし,実際にブレーキが効き始めるまでに若干の時間はあるのですが,たいていの人は気にならない短い時間です。)
ところが電車のブレーキは,操作をしてから実感できるまでに,ワンテンポ置くくらいの時間差が発生します。実はそれほどの時間差でもないのですが,慣れないと「あれ?効きが悪いのかな。」と思ってしまい,それで追加でブレーキの空気を入れて,結果効き過ぎ→急ブレーキということになりがちです。
こういう点に気をつけると,急ブレーキということではなくなるでしょう。

空気ブレーキの仕組みをもう少し詳しく見てみよう

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