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ブレーキを物理的に考えてみようの1

車輪にブレーキシューを押しつけることで,摩擦が発生してそれで止まるのだという話をしました。
このことを物理学っぽく説明してみたいという話です。

 摩擦がなければ世の中大変なことになってしまいます。
 たとえば宇宙空間。何かの力を加えて動き出した物は,他に力がかからない限り,永久にそのまま動き続けます。最初に止まっていれば,他に力がかからない限り,永久にそのまま静止し続けます。ニュートンがまとめた運動の第1法則,またの名を慣性の法則と言います。
しかし,これは実感としてはなかなか感じにくいものです。地球上で生活していれば,止まっているものが止まり続けるというのはまだわかるものの,運動しているものだっていつかは止まるでしょうって考えるのが自然です。
 一方,そうは言っても止まるまでにどのくらい動くかは,物の重さ,動き方,周囲の状況などで全然異なります。さあ,その理由は?と考えた時に,「動いているものもいつかは止まる」という,地球上での動きをそのまま基本に置くのではなく,「本当は動いているものはそのまま動き続けるはずなんだ。だけど地球上では,動いているものが止まるんだ。しかもその止まり方も違うんだ。それはなぜかというと,力が働いているからなんだ。」という説明をして,その方が少ない原理からより多くの事柄を統一的に説明できるというメリットがともなったことで,運動の第1法則は輝きをはなつこととなります。
 さて,動いている物が地球上ではたいてい止まってしまう。その原因は何か?
 これが摩擦力です。地球上の物体には必ずその周囲に何か他の物質があります。たいていは空気がありますし,地面であればそれは土であったり,コンクリートであったり,アスファルトであったり,鉄道でしたら鉄があります。物が動く時,もしくは動こうとした時に,必ずその動きとは逆向きの力として他の物質による摩擦力が発生します。宇宙空間ではそういう物質がないことから,摩擦力がない結果,「動いているものは動き続ける」ことになるのです。摩擦力が常にかかってしまう地球上では,摩擦力の結果,動いている物はいつか止まってしまうし,止まっているものを動かすにはそれなりの力が必要となるということになります。
 摩擦がない地球上の世界,(きわめて限定的な空間に再現することは可能であるものの,そうでもなければ)そんなのはあり得ないわけですが,仮にそうなったら……。いったん動き出したものは動き続けて自然に止まることはないし,止まっているものは止まったままだとはいえ,ちょっとした拍子(=力が少しでもかかると)に動きますから,固定することが非常に困難です。なにせスケートリンクのような氷の面の上でも大変なことになるのですから……。

 さらにエネルギーの話。 戻る  目次へ


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