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接見

接見というのは刑事手続で身柄を拘束されている者と面会すること。

で,刑事訴訟法39条1項は,被告人・被疑者に対して
「弁護人(候補者含む)」と
「立会人なし」で
接見・物の授受(なぜか「交通」と業界では言っている)ができることが
権利として定めている。
まずこれが基本形。

「え,警察官とかの看守がつかないと逃げられない?」
って思うでしょ。
それはごもっとも。
というので,接見のための専用の部屋を用意して
そこで接見してもらうのが定石。
どんな作りかというと……。
これはドラマなんかでも割と正確に再現されていることが多いんだけど
出入口としては両サイドに扉がついているだけで
他には窓も何もない部屋ね。
しかも真ん中には相当丈夫でちょっとやそっとでは壊れない透明の板が固定されていて
お互い,反対側の扉の方には行けないようになっている。
透明の板は音が聞こえるように細かい穴はあいているけど……という感じ。

この部屋だと,たとえ部屋の中に入らなくとも
扉の所に1人配置しておけばまあ大丈夫だわな。

で,ここまで読んで,報道と照らしあわせて
「あれ?弁護人との接見に捜査関係者が2人もいるのおかしくない?」
と思った人は大正解。
今回の報道だけで「じゃあもっとたくさん捜査側の人がいればよかったんじゃないの?」
というのは
若干あさっての方向に行きかねないと思ったのが
今回の話をしようと思ったきっかけなのさ。

刑事訴訟法39条3項は「例外として」
接見の日時・場所を捜査側が指定することができる旨定めている。
これは捜査側にはもともと身柄拘束についての時間制限があるため
被疑者側が接見を繰り返すことで
捜査を事実上妨害することを防ぐという意味があるんだけど
あくまでこれは「例外」
そのことを条文は「捜査のため必要があるときは」で示している。
……ちなみに「公訴の提起前に限り」という制限もあるけど
  これは「捜査を終えてから起訴しなさいよ。起訴後の捜査は許しませんよ。」という前提で
  「捜査が終わっているはずだから,捜査のため必要なときはあり得ないよね。」という話。
でも,かつては捜査側が原則と例外を逆にして運用して
(いわゆる面会切符。
 「いつでも捜査の必要がある」として制限かけて
 検察官のOKがある時だけ面会できるってことをやっていたという。)
さすがに裁判所もだめ出ししたという。
(……このことが実は今回の背景にあるのさ。)

だめ出しの結果どうなったかというと
「逃亡のおそれがあるからこそ身柄を拘束しているのであって
 その時に,立会人なしで接見されると,逃げられかねない」
場合には,3項を発動して接見を断ってもいいし
それは「接見に適した部屋がない」という理由でも許されるけど
それでも弁護人側が「逃げられないよう立会人がいてもいいから」と言った場合には
「接見に適した部屋がない」は理由にならないって判断を最高裁が示したわけ。

今回はその話で
「接見に適した部屋がない」にもかかわらず「立会人付きでいいから接見したい」というものなわけさ。
だから捜査側が2人「も」部屋の中にいたのさ。

さて……。
あんまり知られていない話だけど
特捜部案件のように検察が自ら捜査を行う場合は話は別だけど
圧倒的多数の案件は警察が捜査して検察は補充の捜査をするだけ。
だから検察庁に被疑者がいる時間というのは
逮捕・勾留の中ではきわめて限られた時間にすぎない。
そして刑事訴訟法39条3項があったせいで
「(設備の整っている)警察に戻ってから接見してよね。」
がしばらく許されていた点は
多少検察にも同情の余地がなくもない。
だけど……
原理原則から言えば
39条3項は例外なんだし
しかも最高裁が「立会人ありでもいいからと言ったら接見させないといけない」と言った時点で
接見室作るのが正解なんだと思う。
この点,谷垣法務大臣が「川崎はすぐ作る。他も順次。」とコメントしたのは
きわめてまともなコメントだったのでした。

……つうか,管内人口が函館の3倍もあって,庁舎が6階建ての川崎支部に
  接見室がなかったという方が驚いた。

ちなみに,
検察事務官が座っていた席って
あれは普段の彼の席ではないと読んでいる。
検察事務官の机は検察官の横でしょ,基本的に。
それをあそこに座ったのは,逃走防止対策だったわけよ。


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