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銀行預金の法的性質

銀行預金が「貸したお金を返してくれという」「売買代金を払ってくれという」のと同じ
「債権」であるってことが,あまり知られていないんじゃないかと思ったさ。

銀行預金は銀行と利用者との間に適用される「約款」がたいていのことを定めているんで
民法の典型契約のどれにあたるかという議論は
あまり大きな意味がないのかもしれないけど
でも,「どういう性格なの」と聞かれたら
民法666条の「消費寄託」契約をベースに考えることになっている。
「消費」のつかない「寄託」契約は「物を預かってあげるよ」という契約。
「この物を預かってくれる?」
「よろしゅうございます」
「じゃあよろしくね(と言って物を渡す)」
ことで成立。
預けた側は「預けた物を返してもらえる」という債権を得るわけだ。
消費がつくと,預かった物自体は使ってもいいけど,
返す時には同種同量のもので返さなければならないと変化する。
もっとも基本形は上のとおり。
同種同量のものというものの典型例が「お金」なわけだ。
預かったお金は使ってもいいけど
=預かったお金そのものを保管しなければならないってことはない。
10000円なら10000円を返せば,預けた時の紙幣や硬貨で返すことまでは不要。
これが消費寄託。
銀行預金もこれだとされている。

ここで注目してほしいのは
消費寄託の場合「同種同量のものを返してもらう」という内容の「債権」が成立するという点なのです。
これが債権であれば,当然民法の総則的規定や債権総則規定は適用になるわけで
その中には「消滅時効」の制度もある。
預金という消費寄託において返還請求権が消滅時効にかかる……ということは,
「最後の出し入れから○年経過すれば,返還請求権が消滅時効にかかってしまい,
 仮に訴訟をしても相手が時効消滅を主張立証することで,返還請求訴訟でも負けてしまうのです。

現時点での現行制度であっても
「預けたお金が戻ってこない」ことはあるんです。
(↑ここ重要!)
消滅時効を理由に返還を拒めば,たぶん誰も請求できないことなるだろうし
そうすると銀行は現時点での現行制度においても既に
「預かったお金を返さなくてもいい結果,銀行はその分利益を得る」
制度なのです。

今回政府が「長期間出入りのない預金について復興財源にしよう」というのは
本質的には「従来は金融機関のものになっていた消滅時効にかかった預金債権を銀行から集めて復興財源にしよう」
という構造なのです。
……そりゃあ銀行反対するよなあ。
  ただでさえ収益源が減ることに加えて
  銀行の手間も増えるし……。

ただ銀行の言い分もわかる。
収益源うんぬんかんぬんは持たざる者のひがみっぽい要素もあるんだけど
銀行は会計処理をした後であっても
「正当な権利者」に対しては時効消滅を主張せず,払い戻しに応じている。
一方時効消滅をフル稼動するのがかつての郵便貯金で
「御利用のおすすめ」なんて手紙は出すけど
10年(定額貯金は10年+10年後通常貯金になることから,通常貯金としてさらに10年の合計20年)
で容赦なく払い戻しを拒否している。

「時効消滅を主張できる預金を復興財源に」の発案者は銀行実務を知らなかったんじゃないか……って思えてならない。


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