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多数意見・補足意見・意見・反対意見の例

日本の最高裁判所の判決には,下級裁判所の判決と異なり,裁判所としての判断の他,各裁判官個人の意見を書くことになっています。その意見は,裁判所としての判断との関係で次のように分類されます。

多数意見
裁判所としての判断になります。結論において多数であり,理由についても最も多いものです。裁判所としての判断であることから,法廷意見ということもあります。

補足意見
結論において多数意見と同じであり,多数意見についての理由にも賛成するものの,それだけでは足りないとして理由を補充するものです。

意見
結論においては多数意見と同じですが,理由を異にするものです。

反対意見
結論において多数意見と異にするものです。なお,反対意見の中にも反対意見の補足意見や反対意見の意見というのが考えられますが,全て一律反対意見として扱います。

北海道砂川市神社敷地無償貸与事件
(そのうち事件名もかたまると思うけど,とりあえず命名してみた。
 マスコミでは「砂川神社違憲訴訟」とかいう言い方しているけど
 固有名詞として「砂川神社」という神社があり
 本件はその砂川神社に関する訴訟ではない以上
 この表現は妥当ではないと思う。
 ……実際,某新聞はそこを勘違いして訂正出していたし。)
に関する平成22年1月20日最高裁判決。
……ちなみにおもしろい判決で,既に最高裁のサイトで読めるので御一読を。
  あとhttp://www.lufimia.net/dynamic2/iken/aboutも参照されたし。

ざっくり言うと
主文は「原判決破棄→原審差戻」なんだけど
これに賛成したのは12人,反対したのは2人
ところがこの反対した2人の理由はまるで違うのだ。
堀籠反対意見の理由はざっくり言うと「違憲ではない」ということ
(ゆえに「原判決破棄の上,一審判決を取り消し,請求棄却」)
一方今井反対意見は,違憲である点について多数意見と同じで
しかももはや審理する必要はないから破棄差戻も不要であって
上告を棄却するべきだというもの。
だけど堀籠・今井両裁判官とも多数意見の結論に反対しているので反対意見と呼ばれる。

さて次,違憲か否かという点
今井裁判官は違憲だとしているのは上で書いたとおりだけど
甲斐中・中川・古田・竹内意見は「違憲」だとは判断していない。
事情のいかんでは違憲ではない余地もあり,さらに事実について審理する必要ありという判断なんですね。
一方多数意見(5名)及び補足意見(3名)は,違憲であると判断している。だけど,本件訴訟は「(地方公共団体の)財産の管理を違法に怠った」旨の確認であるところ,違憲状態を解消するために神社の撤去及び土地の明け渡ししか手がないのにそれをしなかったということまでいえないと違法であるとは言えない=他の手段の有無の検討が必要であるとして,その点の審理をさせるため差し戻すとしています。
だから,結論と理由が一致した5名(竹崎・那須・宮川・桜井・金築)が多数意見,その一致の上にさらに理由を補足した3名(藤田・田原・近藤裁判官)が補足意見,結論は一致したが理由は一致しない4名(甲斐中・中川・古田・竹内裁判官)が意見となるのです。

ちなみに余談だけど
同じ日に判決があった砂川の別の神社は1審2審のとおり「違憲ではない」として14名全員一致で上告棄却。
(2010年1月20日 23時01分)


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