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司法警察「官」?

司法警察職員=一般司法警察職員+特別司法警察職員
一般司法警察職員=司法警察員+司法巡査
(特別司法警察職員に司法巡査はおらず,全員司法警察員)
……というのはきちんとおさえていたんだけど
「司法警察官」という用語が実は労働基準法にまだ残っていたというのを
つい先日聞いて,すげえ驚いた。

元の話でいうと,本来警察作用というのは行政権に属するもので
行政目的を実現するための組織なわけだ。
なもんで,行政目的を実現するための組織に
刑事訴訟の手続の一翼を担わせることについては
実は議論の余地のあるところで
実際,刑事訴訟手続の中の警察の役割というのは
国によって結構違っているし
日本だって第2次世界大戦前後で大きく変わっている。
今の日本は,行政警察の構成員に
刑事訴訟の手続の一翼を担わせることにするけど
行政目的を実現するための警察作用とは区別して
「司法警察」とし,その構成員を冒頭のように定めたわけだ。

もっとも戦前の日本の刑事訴訟制度では
裁判所が捜査も全面的にコントロールする態勢だったから,
予審判事の指揮の下で警察官が捜査していたし
裁判所の検事局に属する検察官が公訴を提起していた。
警察官が捜査を担当すること自体は変わってないわけね。

で,戦前の刑事訴訟法における警察官の名称が
「司法警察官」と「司法警察吏」だったわけ。

さて,戦後,現憲法の下でいろんな法律が整備される中で
労働基準法は労働基準監督官に捜査権限を与えたんだけど
昭和22年の施行時,刑事訴訟法はまだ戦前の刑事訴訟法
(に臨時のパッチを当てたもの)だったから
労働基準法102条も,当然それにあわせて
「司法警察「官」」
とした。

ところが,パッチだけじゃもたないというので
刑事訴訟法も全面改正されることになったんだけど
昭和24年1月1日に施行されることとなった刑事訴訟法では
「司法警察官」「司法警察吏」というのをやめて
冒頭のとおりの名称に変えたんです。

そうすると……
せっかく施行した各種の法律の「司法警察官」もなんとかしなきゃいけなくなる。
本当はそれぞれの条文を変えたい。
(そして今ならたぶんそうする)
ところが忙しくてやってられない。

そこでどうしたか?

司法警察職員等指定応急措置法2条で
「他の法令中「司法警察官吏」とあるのは「司法警察職員」と,
 「司法警察官」とあるのは「司法警察員」と,
 「司法警察吏」とあるのは「司法巡査」とそれぞれ読み替えるものとする。」
とした上で,昭和24年1月1日に施行することにしたわけ。

「措置法」だから1回限りの効力だし
「応急」だから,永続的措置として,各法の改正時には一緒に改正してね……
ってメッセージが発せられているわけだけど……。

この応急措置法で読み替えることになった以上
読み替えの効力自体は廃止されるまで続くから
あわてて改正しなくてもいいや……ってなったんだろうね。きっと。

なもんで,労働基準法はその後改正を何回もしているのに
いまだにここは改正されず
結果,「司法警察官」という表記が
文言上は残っていることになっている次第。


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